50代、田舎暮らしのおっさんが乗る「謎のスポーツカー」
50代に入り、日々に体力や視力の衰えをひしひしと感じている田舎住みのおっさんです。
最近は夜間の運転で対向車のライトが眩しくてたまらんとか、乗降のたびに無意識に口から「よっこいしょ」と声が漏れるとか、体の衰えを痛感する毎日を過ごしております。
そんな私が日々嗜んでいるのが、「アルファロメオ 4Cスパイダー」という車です。壊れるスリルと圧倒的な使い勝手の悪さにすっかり脳を焼かれ、不便さを噛み締めながら田舎道を走らせているわけですが……世間からの評価やリアクションというのは、オーナーの熱量とは裏腹に、驚くほど冷静で、そして残酷なものです。
ネットに転がる「スーパーカー夢物語」と現場のリアル
ネットの車系まとめ記事や動画などで、「スーパーカーに乗ると街で大注目!」「爆音を響かせれば子供たちが笑顔で手を振ってくる!」といったキラキラした夢物語をよく見かけますよね。
絶対に、そんな事態にはなりません。 大事なことなのでもう一度言いますね。絶対に、そんなキラキラした事態にはなりません。
私がこのアルファロメオ4Cでサービスエリアや田舎の道の駅に乗り付けた際、見知らぬおじさんや通りすがりの人から投げかけられる質問の9割はこれです。
「これ、何の車?」 「これ、フェラーリ?」
ちやほやされるどころか、基本的には「正体不明の奇妙な赤い乗り物」を見るような、若干の警戒心が混ざった目で見られます。華やかなスーパーカーライフとは程遠いのが現実です。
結論:世間にとって「赤い低い外車=すべてフェラーリ」です
結論から申し上げます。車に興味がない一般の方々にとって、世の中の赤い低い車はすべてフェラーリです。
絶対に、フェラーリだと思われています。大事なことなのでもう一度言いますね。絶対に、フェラーリだと思われています。
車好きからすれば「フロントのエンブレムを見れば一目瞭然でしょう」と思うかもしれません。しかし、そもそも「アルファロメオ」というブランド自体が、車好き以外の層からすればドマイナーな存在なのです。世間の8割以上の人は、あの歴史ある毒蛇と十字架が描かれたエンブレムを見せても、「……どこの国の紋章?」となります。
メーカー自体が認知されていないのですから、そのラインナップにある「4C」という車種名など、一般人が知っているはずもありません。
なぜアルファロメオ4Cの凄さは1ミリも伝わらないのか?
このアルファロメオ4Cという車、車オタクの視点で見れば狂気の沙汰とも言える情熱と技術で作られた素晴らしいマシンなのですが、悲しいかな、その凄さや売りが一般人には驚くほど伝わりません。その理由をファクトに基づいて紐解いていきましょう。
1. 「ライトウェイトミッドシップスポーツ」というジャンル自体が馴染みゼロ
日本で「スポーツカー」と言えば、GT-RやフェアレディZのようなフロントエンジンでパワフルな車か、ロードスターのような軽快なオープンカーが主流です。
ドライバーのすぐ背後にエンジンを配置し、余計な装備をすべて削ぎ落として軽量化を図った「ライトウェイトミッドシップ」というジャンルは、日本においてはあまりにも馴染みがありません。「エンジンが後ろにある=数千万円の凄まじいスーパーカー」という極端な認知しかないため、このコンパクトなミッドシップというコンセプト自体が一般層の理解を超えているのです。
2. そもそもアルファロメオ自体がミッドシップをほぼ作っていない異端児
歴史を振り返ってみても、アルファロメオというメーカーはジュリアや156などに代表されるように、FF(前輪駆動)やFR(後輪駆動)のスポーティなセダンやハッチバックを得意としてきたブランドです。
市販車でミッドシップ(MR)レイアウトを採用した車なんて、ブランドの長い歴史の中でも滅多に作っていません。メーカーの伝統的な系譜から見ても突如として現れた「異端児」であり、車好きですら発表当時は「なんでアルファがミッドシップを?」と驚いたレベルなのです。そりゃあ一般の方が知る由もありません。
3. スーパーカーにしてはサイズが小さく、音も爆音ではない
フェラーリやランボルギーニといった典型的なスーパーカーは、全長4.5メートル、全幅2メートルを超えるような巨大なボディに、V8やV12といった大排気量マルチシリンダーエンジンを積んでいます。
一方、4Cのボディサイズは全長約4メートルと非常にコンパクト。エンジンも1.75リッター(1,750cc)の直列4気筒ターボです。排気量だけで言えば一般的なコンパクトカーやファミリーカーと変わりません。
ノーマルでもそれなりに威勢の良い吸排気音は響きますが、本家のスーパーカーのように地響きを立てるような近所迷惑レベルの爆音ではないのです。その結果、道の駅などで車を眺めるおじさんたちからは、「フェラーリにしてはなんか小さくない?」「音もそこまで大きくないし、おもちゃみたいだな」という、なんとも微妙な評価を下されることになります。
4. 「9割カーボンモノコック」というマニアックすぎる売り
4C最大の変態ポイントであり、技術的な誇りでもあるのが、乗員を包み込むキャビン構造(パッセンジャーセル)に「ドライカーボン製モノコック」を採用している点です。
単体重量わずか70kg程度という、F1マシンや数千万円〜数億円クラスのハイパーカーでしか使われないような超贅沢な構造を採用したことで、車両重量は乾燥重量で1トンを切るという驚異的な軽さを実現しています。
……と、ここまで熱弁を振るっても現実の壁は分厚いです。高速のサービスエリアで話しかけてきたおじさんに「これ、キャビンがカーボンでできてるんですよ!」と力説したところで、返ってくるリアクションは「へぇ〜、カーボン?釣り竿と一緒やね」で会話は終了します。おっさん世代にとってのカーボンなんて、釣り竿かゴルフクラブの素材くらいの認知度なのです。この狂気的な拘りが1ミリも伝わらない歯がゆさ。悲しいですが、これが現実です。
走りの快感と圧倒的な不便さ。それでも脳を焼かれてしまう理由
伝わらなさもさることながら、日常でこの車と付き合うには相応の覚悟が必要です。
まず、パワーステアリングが存在しません。いわゆる「重ステ」です。停車中や低速でのハンドル操作はちょっとした筋トレですし、路面のギャップを拾うたびにステアリングが強烈に取られます。
車高が低すぎるために乗り降りは地べたに這いつくばるような姿勢になり、分厚いカーボンサイドシルを跨ぎながら狭いシートに体を押し込む作業は、50代の体にはなかなかの試練です。おまけに真後ろはほぼ何も見えない絶望的な後方視界。バックで駐車する際は毎回冷や汗をかきます。
道の駅で缶コーヒーを飲んでいると、「おっ、かっこええ外車やな!これフェラーリ?」と話しかけられ、「いえ、アルファロメオっていうイタリアの車でして……」と説明するものの、「アルファ……?聞いたことないなぁ。お兄さん、これお高かったでしょ?」と、噛み合わない会話が繰り広げられます。(50代のおっさんを「お兄さん」と呼んでくれるのだけは少し嬉しいですが)
世間からは「謎の小さい赤い車」としか認識されず、パワステもなく快適装備も皆無。実用性などミジンコほどもありません。
では、なぜ私はこのアルファロメオ4Cを手放さないのか。
それは、世間の評価や利便性などどうでもよくなるほど、この車がもたらしてくれる走りの快感が異常だからです。
アクセルを踏み込んだ瞬間、背中越しに聞こえる1.75リッターターボの荒々しい吸気音とタービンの音。ダイレクトすぎるハンドリング。カーボンモノコックだからこそ味わえる、岩のように強固で歪まないボディ剛性感。快適性や実用性をすべてドブに捨てて、「軽さと走り」だけに全振りしたメーカーの狂気。
誰にも理解されないマニアックな構造を抱えながら、田舎の空いている山道を流すひととき。見知らぬ人に「これ何の車?」と聞かれ、「何の車なんでしょうねぇ」と苦笑いで返す瞬間。
この不合理で無駄だらけの愛おしさこそが、車オタクという病の深さなのだと思います。
本日もこんなおっさんの駄文にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。



















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